珈琲。
P3主が1主の甥だったらいいのに同盟通称・甥っ子同盟(長いなオイ)に加盟しようかと思い、
急遽、SSをでっちあげてみました。
発売年をペル1の時代(1996)としたら2010年(だったよね?)のP3だと、30代前半。三十路
超えたP1主人公がちょっと想像つかないので、歳のわりに若々しい男、という設定で。
※ちなみに、前のP3SSの設定(EDの後眠り続ける主人公)のままで行きます。
P3の主人公の名前は「摩白 真人」。P1主人公の名前は、忘れたので名乗らずに勧めます。
ちなみにP3の母の弟がP1主。
一瞬。 ほんの一瞬だけど、《彼》が目覚めたのかと思ってしまった。 「…」 私の隣では、美鶴先輩から預かった花を挿した花瓶を持ったアイギスも驚きの表情のままで固まっていた。 今も眠り続けたままの《彼》の傍らに立つ人物は、似ていた。 まだこちらに気づいていない。私たちからはその背中しか見えない。 だけど、その静かな雰囲気は、《彼》にとてもとてもそっくりだった。 「…?」 私たちの気配を感じたのか、その人物は振り返る。 歳は20代の半ばだろうか? クセの強そうな髪の間、耳元に光るピアスがなぜか印象に残った。 「…真人の友達、かな?」 ペコリと。軽く頭を下げる。 「は、はい」 あわてて私とアイギスが頭を下げる。 「あっ」 勢いよく前かがみになったせいで、花瓶から花と水が零れ落ちてしまった。花の方はなんとか飛び出す前に花瓶の姿勢を戻せたが、水はいくらかが床に撒き散らされてしまった。 「あ、あ…」 動揺が収まらない。 「ハハ…」 ポケットから取り出したハンカチで、水をふいてくれた。 苦笑とも微笑みともつかない、その小さな笑みもまた、《彼》を思い出させる。 「あの、あなたは…」 「真人の叔父です」 静かな笑顔とともにそう答え、その男性は再び《彼》の傍らに立った。 「…」 「…」 静かな時間が流れる。男性は何も語らず《彼》の顔を見下ろしていた。 私たちも口を開かない。二人の姿が、なにか侵してはいけないものに見えてしまい、ただ立ち尽くしていた。 その中で、私は思いだしていた。 (ああ、この人がそうなんだ…) 《彼》が笑っていた、あの日を。 ■ ■ 「なにそれ?」 まだ、私たち同クラスの2年三人と、先輩二人だけの寮生活だった頃。 一階で、《彼》が何かをしていた。なんだか見覚えのあるような無いような器具と、傍らにおいてあるダンボール。 「コーヒー」 「は?」 「だから、コーヒーを淹れてるんだ」 言われてみれば、それらの器具は確かにコーヒーを淹れるものだったハズだ。彼のすぐ傍らにあるのは、コーヒー豆を粉にするもので…たしか、コーヒーミル、だったかな? 「叔父さんから送られてきたんだ」 「ふぅん」 なんだか違和感を感じていた。 《彼》は、こんな弾んだ声で話すことができたんだ、と。 多分、《彼》とあったことがない、話したことがない人には、そうは感じなかっただろうけど、私にはわかった。 そのとき、その場にいなかった順平や先輩たち、それに《彼》と親しかった人たちなら気づいたろう、その小さな変化。 「叔父さんって、どんな人だったの?」 そこで一つ気づいた。 「よくわからない人。育ててもらって何だけど、本当によくわからない人だった」 このとき、私の目の前にいたのが、本当の《彼》だったことに。 「ポーカーフェイスでさ。もう、表情が固まってるんじゃないかってくらい」 贈り物が届くだけで、いつもの鉄面皮が失せるほど、《彼》はその叔父さんに心を寄せているんだって。 「ふぅん、キミみたいな人なんだね」 「よく言われる」 笑った。苦笑とも微笑みともつかない小さな笑み。 レアだ。スベった順平が脂汗を流し、涙ぐみながら逃げていくほどの無表情を貫ける男の笑み。 「コーヒー、すきなの?」 「あの人のコーヒー味わっちゃったらね」 チクリとした。たぶん、まだ形にならない感情のまま心に刻んでしまった、最初の嫉妬。 「そうじゃなくて、キミが」 また小さな変化。驚いてる。今までで一番に。 「ああ、うん」 ゴリゴリとコーヒー豆をミルで砕いていた手がわずかに動揺したように動きが鈍った。 それからは、私と《彼》だけがいる空間に、豆を砕く音だけが流れていった。 「…私にも淹れてくれる?」 「いいよ」 しばらくしてから私の言葉に頷いた《彼》を見て、ソファーへと身体を沈ませる。 今思えば、《彼》は照れていたのかもしれない。 おそらく、大好きな叔父さんと、同じ趣味を持つことを指摘されたことに。 「…いい香り」 歳に似合わない、でもなんとなく《彼》には似合ってると思える、手馴れた手つきでの作業を見ながら、焙煎されたコーヒー豆が姿を変えて私の舌を喜ばせてくれるまでの時間を楽しんだ。 ■ ■ 「あの」 「エッ!?」 その声に、私は現実に引き戻される。《彼》の叔父が、すぐ側にいた。 「一つ聞きたいことが」 「な、なんでしょう?」 一つ息をつくような間。 「真人は、キミたちにとってかけがえのないといえる仲間だったかな?」 「……」 私とアイギス、二人ともが固まった。絶句したともいえる。 「友達」ではなく「仲間」といった。 それは、もしかしたら「友達」という意味でのことだったのか。 だけど、私は、私とアイギスはそうは思えなかった。 「アナタは…」 アイギスはなにを聞きたかったのか。多分、私と同じだろう。 そして私と同じ理由で言葉を止めた。 「《彼》は」 この人は何を知っているのか。《彼》や私たちのことをどこまで。 でも、それはこの人にとって、そして私たちにとっても多分、どうでもいいこと。 だから、私は答えた。決まりきった答えを。 「そう」 最後にもう一度、あの笑みを見せて、《彼》の叔父は病室を出て行った。 私たちは病室を出て、見送っている。 「真人さんは、あの人に育てられたのですね」 アイギスの言葉に頷いていた。 さしてたくましいとは思えない背中。 でもその背中は、大切なものを背に、とても大きなものへと立ち向かった《彼》のそれと似ていた…。
-END- |
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同盟?に加盟するなら、なんか一品作っといた方がいいかな?と2時間で書いたこのSS。UPしといてなんだが、ワケがわからんな。 主人公たちがコーヒー好きで、ミルで粉挽きからやってるというのは、このSSを作るにあたって、大人になったP1主はどんな人間かな−と考えたときに。なぜか、物静かな大人のP1主が、自分の淹れたコーヒーを顔を揃えた昔の仲間たちに振舞っているシーンが浮かびました。本当に何故だ? |