例会・研究会ダイジェスト 【講演】
「e Dreamの実現に向けて〜ソニーのeビジネスの戦略について〜」
株式会社エンタテインメントプラス 代表取締社長 立花 雅夫氏

エンタテインメントプラス今年4月から営業開始(セゾン50%ソニー50%合弁会社)

 今晩は。今紹介いただきました株式会社エンタテインメントプラスの立花です。エンタテインメントプラスというのは私も舌を噛みそうな、長い名前でして、通称ロゴのイープラスで呼んでいます。インターネットを通してチケットを売る会社で、昨年7月に設立いたしました。それまでは、プリント基板やハイブリッドICを製造しているソニー根上工場(石川県)でマネジメントを3年半しておりました。石川県は「温泉よし、酒よし、肴よし」で大変気に入っていたのですが、「突然インターネットで、チケット販売の会社をやれ」というお話が来まして、東京にいる家族のもとに戻り、エンタテインメントプラスの初代社長になりました。

 チケットセゾンは、東京・関西などの一等地にあるデパートの中にプレイガイドを置き、女性数名程度でチケットの対面販売をしていました。座席の空席状況はネットでつながっていました。ピーク時には年商300億円くらいのビジネスだったと聞いていますが、銀座・池袋・渋谷をはじめ全国70ヵ所のプレイガイの固定費がかさみ厳しいビジネスでした。しかし、今までやってきたビジネスを生かし、続けていきたいとソニーに相談がございました。それならば、採算を良くする違った方法でやってみようということで、セゾングループが50%ソニーが50%で合弁会社を作ることが、2社のグループの間でまとまりました。
こうして設立されたのが株式会社エンタテインメントプラスです。役員の数はソニー3名、セゾン2名で、代表取締役はソニーからということで、私がすることになったのです。

 私はプリント基板を作ったりCDプレーヤーを作ったりしていた者で、チケット販売というのは想像もつかない世界です。ただ、問題はプレイガイドの固定費にあるということはすぐにわかりましたので、一等地にありましたプレイガイドを昨年の10月に全て廃止いたしました。そのかわりに何でやっていくかを議論した末に、最終的にはインターネットでやろうということになりました。ただ、インターネットだけでは普及率が20%です。またチケットを買ういわゆるJポップスという世代が、インターネットを使うのかという議論がありまして、行きついた結論は、電話でもオーダーをとろうということになりました。

インターネットでのオーダー7割に驚く

 こうして電話とインターネットを使って、プレイガイド廃止という大英断をして、年齢層から考え電話とインターネットの比率は7対3という前提で、システム開発を進めてまいりました。私は個人的に5対5ではないかと申していましたが、この4月に東京で販売をスタートさせたところ、なんとインターネットが7、電話が3になっていました。電話はIVRという自動応答装置を入れ、かなり投資もしたのですが、結果的には我々の当初の予想が見事にはずれたことになります。いかにインターネットが波及しているかということがわかりました。最近では方向転換をいたしまして、電話で受けることにはこれ以上投資をせずに、むしろインターネットを積極的に進めていこうということを決断いたしました。また、チケットを買うマジョリティの18歳前後はNTTドコモのiモードを使っていると考え、来月にはシステム開発が完了し、iモードでも対応できるようになります。iモードとインターネットで9割のオーダーがとれると予想しています。いかにインターネットの勢いがすごいのかということがわかります。

 4月からホームページを立ち上げまして販売しているのですが、実はインターネットでチケットを売る時に課金という問題が発生します。クレジットカードの番号を登録していただく方法と、銀行振込の2通りでやっています。当初、チケットを買われたお客様の9割が銀行振込をされてきまして、手数料と銀行に行く手間を思うと不思議に思っていましたが、これは株式会社エンタテインメントプラスの知名度に問題があったのです。「一体どこの会社なんだろう。こんなところに自分の大事なクレジットの番号なんて知らせる気持ちにならない」・・・というお客様の本音があったようです。

 そこで、「ソニーとセゾンの共同設立会社」という文言を社名の下に入れましたところ、比率は5割、5割になりました。私達も一日も早く、株式会社エンタテインメントプラスという名前だけで、お客様がクレジット番号を安心して入れていただくようになりたいと願っています。現在のところ、親会社の名前を利用するだけで、webの世界ではこんなにも違うものだとがわかりました。クレジットカードによる課金の場合には、会社の身元をはっきりさせる必要があるとわかった次第です。

コンピュータ事業、商品企画に関わった時代

 昭和45年に大学を卒業してソニーに入社したのですが、ソニーでは3年ごとに営業から設計、商品企画など10の仕事を経験し、振り返ってみますと、会社のマネジメントをさせられる場合、本当に役にたったなと思っています。将来、会社を経営される方を育てていらっしゃる場合には、仕事はぜひ回してあげるといいと思います。  私は今、インターネットを使ってチケットを売るというeビジネスに携わっていますが、eビジネスとの関わりは、思い起こせば10数年前に遡ります。ソニーの出井社長(6月の株主総会で会長)から呼ばれまして「コンピュータの仕事をするからやらないか」と言われました。ちょうど3年経っていた時期でしたので「はい、やりましょう」と言ったわけです。ソニーは当時テレビではトリニトロンカラーテレビとウォークマンが柱でしたので、コンピュータをやるというのは珍しい種類の人間でした。

 今では非常にポピュラーになっていますが、3.5インチのフロッピーディスクを開発したのはソニーでして、米国向けに3.5インチのフロッピーの入るワープロを作ってみたりしました。また汎用機を作っていたIBMがパソコンの世界に入り、シングル機能でなく多機能のIBM PCを発売し、大成功をおさめていまして、IBMのコンパチが売れた時代でした。それで差別化を図りながらIBMのコンパーチブルを出そうということになりました。「Small is beautiful」という言葉がはやりまして、ラップトップコンピュータを制作して、米国向けに輸出しました。今ソニーのVAIOは業界シェアで3位ということです。これからもかなり浸透しそうですが、このコンピュータはVAIOの走りの1号機ということができるでしょう。このように、ワープロ、コンピュータ、そしてキャプテンシステムと当時ソニーが関わったeビジネスに私はどっぷり浸かっていました。

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