東京魔人学園 鬼龍譚  第壱話「特命」





時は1866年、嘉永と言う年号を持つ時代。
徳川幕府のお膝元、江戸。
その町は栄えの象徴でもあり、腐敗の象徴でもあった。
幕府と言う権力を笠に着た者が弱い者を虐げ、戦うすべを持たない弱い者は
ただそれに耐えるか、その命を絶つか・・・。
だが、それが全てではない。
幕府を訝しむ者達に「幕府の狗」と言われようとも、その誇りを捨てず、
誇りある牙ある狗として江戸を、江戸に住む者達を心から守ろうとする者達もいた。



その最中、江戸に現れし、鬼───。
幕府を憎む者達、鬼道衆。
鬼より江戸を守りし者、龍───。
江戸に住む者を守ろうとする者達、龍閃組。
二つの『力』が入り乱れる時。
一体何が起こるのか?
それは誰にもわかることは出来ない。
そう、例え全てが誰かの手の上で踊らされてるにすぎなくとも。
多くのモノが踊る手のひらの主でさえ、わかることはない。
時は、常に変革を過ごしているのだから・・・・・・・。





静かな山中。
緑は溢れ、木々はその豊かな緑を風に揺らしている。
山に住む動物たちもまた、ただその時を静かに過ごしていた。

・・・その山中には、人知れず村がある。
今という時を憂い、力ある者に虐げられ住む場所すらも奪われた者達が住まう村。
村の名を、鬼哭村という・・・・・・。





「あー!このっ!俺の焼き魚!」
「はっはっは、まだまだ修行がたりんなぁ。」

村にある一際大きな屋敷。
そこに少年と思われる怒声と、愉快げな男の声が響き渡る。

「まったく、坊やも魚を食べられたくらいでそんなに騒がなくても良いじゃないか。」
「俺を坊やと呼ぶな!・・・ったく!この生臭坊主!」
「む、生臭坊主とは失敬な。どうせなら破戒僧と言ってくれ。」
「どっちでも同じだろ!」

怒っているのはまだ十代中頃の少年。
怒られてはいるのだが全く気にしていない頭を丸めた青年。
それを呆れたような、だがどこか愉快げに見ているのは妖絶な女性。
そして・・・

「たーさん、早くしないと坊やに魚取られちまうよ?」
「へ?・・・なんかあったの?」

女性がそう隣で味噌汁をすすっている青年へと声をかけた。
一方、青年の方は辺りの怒声を気にもとめず朝飯を食べていたせいか
急に声をかけられいったい何のことか理解してないようである。

「ちょっと待て桔梗!俺はそんな卑しいまねはしねぇ!
 その前にたんたんもなにのんきに味噌汁すすってんだよ!」
「いや、そんなこと言われても俺は朝飯はゆっくり食う派で・・・。」
「はははっ、師匠らしいな。」
「ふふっ、まったくだよ。」

いまいち事態についていけない青年をよそに、笑う二人。
妖絶な女性、名を桔梗と言い、頭を丸めた青年は九桐尚雲と言う。
そしていまいち腹の虫がおさまらない少年、風祭澳継。
そんな三人の渦中で味噌汁をすすっている青年の名を・・・緋勇龍斗と言った。

「むぐ・・・、ところで天戒は?」

一口味噌汁を口に含んだ後、ふい、と辺りを見回し龍斗が不意にそう言う。

「あぁ、天戒様なら村の見回りだよ。
 たーさんは朝餉を食べるのに夢中で気づかなかったみたいだけどねぇ。」
「ふーん。・・・そう言えばさ、確か今日だったよな?」
「何がだ?」
「何って・・、忘れたのか?今日は若から大事な知らせがあると前々から言ってたろ。」
「・・・今日だったのか?」
「これだから坊やは・・・。」

本気で忘れてたらしい澳継にため息をもらす桔梗。
それに一瞬ムカッとくる澳継だが、忘れてた自分が悪いのをわかってるために
何も言えずに耐えている。

「そろそろ俺達も本格的に動く頃だろうからな。
 いつ今日のような知らせがあったとしても可笑しくない。
 今度はわすれないようにしろよ?」
「・・・わかったよ。」

尚雲はさっきまでのお気楽なフインキからまったく別のフインキへと身を変え、
澳継へと強く言う。
九桐言葉に一瞬だけ返答を遅らせながらも、澳継はしっかりとした口調で答えた。
それはさておき、龍斗はと言うと椀に入っていた味噌汁を全て飲み干し終わる。
そして徐に立ち上がり、廊下の方へと足を進めた。

「おや、たーさん。何処か行くのかい?」
「ん、ちょっと食後の運動がてら散歩に。行く場所は特に決まってない。」
「そうかい。ちゃんと天戒様の話がある時間までに帰ってくるんだよ?」
「あいよ、んじゃ行って来るわ。」

ギシッ、と音がする廊下を歩きながら、龍斗は振り返らず、ただ軽く手を振りながら
桔梗にそう言い、廊下を外へと歩いていった。




鬼哭村、そこは幕府によって住む場所を、生きる地を、大切なモノを、全てを、
何の罪もなく奪われた者達が住まう地。
時代を憂う者達が住まう地。
そして彼らは「鬼」となり、江戸を騒がす「鬼道衆」と名乗る。
鬼を従えるのは幕府によって滅ぼされたはずの一族が一人。
名を、九角天戒と言った。




「・・・あれは・・・。」

村を歩く龍斗がふいに人影を見つけた。
その髪は深紅、いや真紅とも言えるそのアカの色。
ただ者ならぬその気を纏う青年が、龍斗の視線に入った。

「天戒?」

自分の記憶の中にある姿と名前を一致させ、その者の名を呼ぶ。
するとその青年は龍斗の声に気づいたのか、くるりと振り返り言葉を紡いだ。

「龍────。」

その言葉が青年、天戒の口から紡がれると同時に龍斗は天戒の方へと歩み寄る。

「よっ、父上殿と話の途中だったか?急に呼びかけて悪かったな。」
「いや、気にするな。・・・今日は、これからの事について話していたのだ。」

天戒のその言葉に、一瞬龍斗の肩がピクリと反応した。
「これからの事」、それはきっと今日は彼の口から話される「重大な事」なのだろう。
そう認識すると、龍斗は天戒へと問いかけた。

「なぁ、天戒。その・・・、今日話す大事な事ってさ、いったい何なんだ?
 この前、お前が「大事な話がある」って言ったとき、俺には何故か楽しさがこみ上げた。
 なんて言うか・・・、なにか楽しそうな事がありそうな予感、って言うのか?
 俺が楽しいこと、つまりは俺が絶対に退屈しないことが好きなのは知ってるだろ?
 その俺の直感が、そう思ったんだ。・・・なんかすげぇ事するつもりだろ。」
「・・・・・。」

龍斗の言葉に、天戒は暫し何も言わなかった。
辺りは森から聞こえる動物たちの声や、村の人々の声、風の音だけに包まれる。
そこには二人の声はなく、辺りの音達ですら聞こえないような静寂があった。

「・・・ふっ。やはり龍には隠しきれんか。」

沈黙を破ったのは、天戒。
龍斗は沈黙を破った天戒の発言に、少し笑みを浮かべた。

「そうだな、これから皆に言うことはお前の言う「楽しいこと」なのだろう。
 ・・・龍、最近江戸に現れた我らの道をふさぐ者達のことは無論知ってるな?」
「勿論。江戸を騒がす俺達鬼道衆、そして江戸を守る者達───龍閃組、だろ?」
「うむ、龍閃組が現れてからと言うもの、奴らは我らの邪魔をしてきた。
 戻ってきた下忍達から話を聞けば、気を操り武に長けた者達だという。
 しかもまだ若い。俺達とそう変わらない年代だそうだ。」
「へぇ、同年代で違う道を歩む者達、か。」
「俺や尚雲、桔梗、澳継、そしてお前はまだ戦ったことがないだろう?」
「うん。戦う直前まで行ったことはあったんだけどね。」
「それはこの前の任務か。」
「その通り。あの時は俺も面を着けてたし、声も聞かせた覚えはないから
 あちらさんが俺の事をちゃんと認識したとは思えないけど。」

そう言うなり、龍斗は懐から一枚の面を出した。
その面は、下忍達がつけてる者とは全く違い、「鬼」と言うよりも神楽舞を舞う時に
つけるような、能面に似た滑りのある表面に、相手を睨むような眼穴が空いた面だった。
額からは白い表面に色が映える金色の施された角が二本生えている。
面の形も顔を全体覆うようなモノでなく、顔の上半分を隠すような形だった。

「ほう、それは・・・。」
「そ、お前に貰った面だよ。でも良いのか?これって九角家に代々伝わっていた
 面なんだろ?俺みたいなヤツがつけちゃって・・・。」
「お前に似合うと思ったからこそ、お前に託したのだ。
 着けて見せてくれぬか?」

天戒の言葉に頷き、その面を顔へと着けて見せる。

「やはりよく合ってるな。その面はお前のためにあるようなモノかもしれん。」
「ははっ、桔梗や尚雲にもそう言われたよ。澳継には色々言われたけどね。」

苦笑しつつ、だがどこか嬉しそうに言う。
そして再び面を懐へとしまった。

「さて、話がそれたから元に戻そうか。
 ・・・・で、天戒。お前は、どうしたいんだ?
 俺が予想するに、今日の話は龍閃組に関する事だろ。違うか?」
「・・・いや、違わんさ。お前の言うとおり今日皆に話すことはお前の言うとおりだ。
 今知りたいか?」
「むぅ・・・、遠慮しておくよ。こう言う事はみんなが集まって話し合うモノだ。
 俺みたいな下っ端と鬼道衆の頭目が二人ではなす事じゃない。な?オヤカタサマ?」

何処か愉快げな笑みを向け、龍斗が言う。
笑みを受け、天戒はどこか呆れた顔で言葉を返す。

「下っ端とは・・・。お前もまた鬼道衆になくてはならない存在なのだがな。
 他の者達も言ってたぞ?「龍斗様は俺達のことを大切に思ってくれる」、とな。」
「おや、それは初耳。誰だか知らないけど嬉しいこと言ってくれるじゃないか♪」
「だが事実だろう。お前は、この村に住む者達を好いているだろう。」
「まぁね、自分で言うのも何だけど、好きだよ?」

その時、龍斗が浮かべた笑みはさっき浮かべてた様な楽しげな笑顔とはまた違う、
優しさの入り交じった笑顔だった。
その笑顔を見て、天戒は同じように笑みを返す。

「そうか・・・。礼を言うぞ。」
「へ?なんで。」
「この村を好いていてくれる。それが理由だ。
 ・・・時に龍。お前、ここで俺と話していて良いのか?どこか行く所でも・・・。」
「あ、そうだった。散歩に行こうと思ってたんだ。」

ハッとした顔でポン、と手を打つ。

「それじゃ、行って来るわ。ちゃんと時間までには戻ってくるから心配すんなよ?」

最後に「じゃあな」と言うと、龍斗は村の出口へと足を進めた。
天戒は、その後ろ姿を見送り、再び石碑へと目を向ける。

「父上、これから大変そうです。
 あいつが、龍が凄いことをしてくれそうですからね・・・。」

その顔には、言葉とは裏腹にどこか楽しそうな笑みが浮かんでいた。





「さて、何処行くかな?」

村を出た龍斗は内藤新宿まで足を延ばしていた。
辺りをキョロキョロと見回し、ウーンと小首を傾げる。

「なんか小腹が空いたような・・・。
 朝飯ちゃんと食ったのに・・・・。そんな腹減りやすい体じゃないのになぁ?」

ぼやきつつもすでに足はある方向へと。
前に龍斗がこの場へと来たとき、ある蕎麦屋に入ったことがあった。
その蕎麦屋が龍斗は気に入っていたりする。
なので小腹が空いたとぼやく龍斗が向かう先は、その蕎麦屋なのであった。


ガララッ
木戸が開く音と共に蕎麦屋の戸が開かれる。
入ってきたのは龍斗だ。

「らっしゃい!」

店の主人の気前の良い声が聞こえた。
適当に席を選び、かけそばと酒を頼む。
流石にこの時間から酒はダメか?と思いつつも以外と酒好きな龍斗は
ついつい頼んでしまうのである。

「ここの蕎麦は美味いんだよな〜♪」

嬉々として蕎麦を待っていると、ガラッ、と音がして再び戸が開いた。
いつもなら気にしないだろうその音。
だが、何故か今日はその音が気になり、ふいと首をそちらへと向ける。
戸から入ってきたのは──────


「あー、腹へった。ったく百合ちゃんも朝から人使いが荒いっての。」
「そう言うな。寺の掃除をするのも俺達の仕事だろう。」
「でも朝ご飯食べてなかったからお腹空いちゃったよ。」
「うふふ、そうね。でも働いた後のご飯はいつもより美味しく感じるわよ?」


「これはこれは・・・・。」
入ってきた者達を見、思わず笑みがこみ上げてくる。
赤茶けた髪の剣士、巨漢の坊主、活発そうな少女、優しそうな少女・・・。
見覚えのあるその顔。

「これも、何かの偶然ってか?」

誰に言うわけでもなく、自分以外誰にも聞こえないくらいの声で呟く。
その顔は、やはり楽しそうな笑みが浮かんでいる。

「へいっ、お待ち!」

と、不意に声がかけられる。
見てみれば店の主人が蕎麦を持ってきたところだ。

「あぁ、ありがと。」

蕎麦を受け取ると、まず先に少し酒を口に含み飲む。
杯を片手に持ちつつ、龍斗の視線は先ほどは行って来た者達へと向けられていた。
黒い瞳に浮かぶ色は、何とも言い表せない色。
愉快げな、楽しそうな、そしてほんの少しの「敵」に対する感情。
そんな複雑な色をする眼を一瞬伏せ、再び瞼を開けた後視線を彼らから外す。

「ま、今は関係ないよな。」

・・・そう、今は、な?

最後に再び小さく笑みを浮かべると、何処か上機嫌に作りたての蕎麦を口に運んだ。




「たっだいま〜♪」

龍斗が上機嫌に九角屋敷へと帰ってきた頃、そこには全員そろって座っていた。

「おせーぞたんたん!」
「たーさん何処まで行ってたんだい?」
「師匠が遅れるとは珍しいな。」

口々に言われるが、龍斗はニコニコと笑ったまま定位置へと座った。
他の面々は一体何があったのかと小首を傾げて龍斗を見ている。

「龍、何かあったのか?」
「へ?まぁあったと言えばあったね。・・・顔に出てる?」
「あぁ、ありありとな。」

言われて表情を普通に戻そうとするがどうしても頬が緩むらしく元に戻らない。
どうやら蕎麦屋からこの状態だったようだ。
・・・歩いてる最中に周りにどんな目で見られていたかは気にしないでおこう。

「・・・まぁ、とにかく師匠が戻ってきたんだ。
 若、話を始めましょう。」
「うむ。」

尚雲の問いに対する天戒の小さな答え。
ただその小さな答えだけで、辺りの空気が一変する。
和やかな空気から、何処か緊張した空気へと。
まぁ、自分たちの頭目からの重大な話というならば、こうなっても仕方ないだろう。
そして、そんな空気の中天戒が口を開いた。

「皆も知ってるとおり、江戸に龍閃組と言う者達が現れた。
 奴らは我らの行く道をすでに何度か防いでいる。
 放っておくと必ずや我らの最大の障害となることであろう。」

最大の障害、その場にいる者はその言葉を黙って聞く。
だが、その胸中は皆同じ事が思い浮かんでいるのだろう。
龍閃組、それは己達の敵のナマエ────。

「我らは今まで身を潜み、行動を起こしてきた。
 だがこれからは我らもまた「鬼」と名乗り、江戸に向かうことだろう。
 龍閃組と戦うことも多くなる。
 だが被害は最小に控えなければならない。わかってるな?」

その問いにその場にいる者が一様に頷く。
天戒は村に住む者達のことを何よりも大切に思っている。
そして、村の者達は下忍として鬼道衆に参じている。
無論、偵察などに赴き、戦闘を行うこともある。
天戒の言う「被害」とは、村人達が傷つくことである。
それを防ぐためにも、自分たちが戦わなければならないのだ。

「その為には少しでも相手の事を知る必要がある。
 そこで、皆に一つ聞きたい。」

一瞬、沈黙が訪れ、その視線は完全に天戒へと向けられ、
そして・・・・

「龍閃組への潜入調査、これをどう思う?」

その言葉を聞いた直後、龍斗の笑みが、深くなった。
ただ、楽しそうに、愉快そうに、面白そうに。
自分が退屈しないことが、そこにある、と。

「潜入調査って・・・天戒様。ちょいと危険じゃありませんか?」
「僭越ながら俺もそう思います。もし正体がわかってしまったら・・・。
 それこそ手のつけられないことに。」
「俺は絶対イヤですよ!あんな奴らの仲間になって行動するなんてッ!」

一同の答えは否定的だ。
確かに、敵陣への潜入調査は大きな利益がある代わり、それと同じくらいの危険がある。
そのような答えが返ってきても全くおかしくないのだ。
・・・だが、否定する者達の中、天戒を除きただ一人笑みを崩さない者もいる。

「・・・それ、俺が行こうか?」

静かに響く、愉快げな声。
大きく声を出したわけではない、だが、しっかりと響く声。
その声の主は、未だ笑みを崩さない者・・・龍斗である。

「・・・龍、これはまだ決まったことではない。
 それに言った俺が言うのも何だが、危険が多すぎる。
 だが・・・、お前ならやれるかもしれんな。」
「もちろん。」

自身ありありと、さっきまでの笑みとは違う少し挑戦的な笑みを浮かべそう返す龍斗に
天戒もフッと薄く笑みを浮かべ返した。

「たーさん・・・。本当に大丈夫かい?」
「若の言葉に反対するわけではないが・・・、危ない橋を渡ることになるぞ。」
「お前なんかに出来るほど簡単な事じゃねぇんだぞ!」

龍斗の言葉に心配するように声をかける。
澳継は馬鹿にしているようにも聞こえるが、以外と仲間思いの彼のことだ。
内心では心配しているのかもしれない。
そんな心情を知ってか、龍斗はその心配を吹き飛ばすような明るい笑みを浮かべ、言う。

「心配すんなって。俺はそんなに弱くねぇし、馬鹿でもねぇよ。
 それに、龍閃組への潜入・・・面白そうじゃん?」

本当に、本当に楽しそうなその笑み。
なぜここまで彼は笑えるのか。危険な橋を渡るというのに。
いかなる事だろうとも、己が楽しいと思う事には本当に楽しそうな笑みを浮かべ、
そして身を投じる。
そう、それが・・・、それが緋勇龍斗という存在なのだ。

「龍、これは尚雲も先に言った通り、危ない橋を渡ることとなる。
 龍閃組の中にも感鋭い者がいるだろう。いつお前の身がわかってしまうかわからん。
それでも、良いのだな?」
「あぁ。」

短く、明確に答える。
その顔にはこれから起こることに対しての笑みを浮かべて。
天戒はその笑みを見、一瞬息をついた後、声を張り「命」を伝える。

「鬼道衆が一、緋勇龍斗に命ず!
 龍閃組へと潜入し、あやつらの事を調べ、随時報告せよ!」

その「命」・・・、いや「特命」に、龍斗は今まで以上に楽しそうな笑みを浮かべ
楽しそうな声で、肯定の言葉を唱えた。

「御意!」






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