第二十五章

〜6年

 青空。

 最初に目に入ったのは、抜けるようなすみきった空だった。

 刹那の《記憶》の中にいたときと同様に、あたしは、誰かの見ている景色を見ているのだろう。

 

   『これからは貴方自身、葦鳳壱姫という女の子が封じられた《記憶》』

 

 三芽さんの言葉通りなら、あたしは今、あたし自身の記憶を見ているのだろう。ふと視界に入った両手が、かなり小さい。

 見ている景色も、やはりどこか見覚えがあった。遠くに見える、木々の中に埋もれるようにある屋敷は、秦の屋敷ではないだろうか?

「おーいッ、壱姫―――ッ」

 ・・・・千夜の声かな? でも、なんだか声色が・・・・。

「千夜ーッ、こっちこっち」

 視線が下がる。どうやら、あたしは巨木の枝に乗っかっていたようだ。すごく太い木の幹に添うように視線が動き、木の根元にいる少年の姿が見えた。

 子供時代のときの千夜だ。記憶が正しければ、多分11、12歳ぐらいの頃だ。ということは、あたしも同じ頃の姿をしているわけか。

 

『・・・まだ、記憶が戻ってない。不完全な術とはいえ、六年間も封じられてた記憶だから、当然か・・・』

 

 あの時の三芽さんのいった《記憶》だとしたら、6年前のことだろうか。風景や太陽の様子からして、夏真っ盛りって感じね。

「おい、壱姫。修行さぼって、なにしてんだよ。皆探してたんだぞ」

 千夜があっという間に、あたしのいるところまで昇ってくる。

 ・・・そうか。あたしたち、秦家の屋敷に一度修行に来てたんだ。確か・・・・小学校の5年生の夏休みに。

「ここ、気持いいーんだ。なんだか空に浮かんでるみたいでさ」

 あたしは今、岬のように突き出した崖の上に一本だけ、デーンと立っている巨木の上にいる。たしかに、地上が眼下にあって、まるで空を浮いているような感じがする。

「それに、屋敷から離れてる方が、よく《来る》し・・・・・」

「・・・・・また、聞こえたのか?」

 千夜が不安そうな顔をした。

「うん・・・・、『サムい・・・、クラい・・・』って言ってた。前とおんなじ」

 そうだ。あたし・・・、あたしたち五人、ここに来てから、変な《声》が聞こえるようになったんだ。

 夢の中に、修行中に、食事中に・・・・。途切れ途切れに聞こえてくるその《声》は、日に日にハッキリとしたものになっていた。

「やっぱり、誰かが呼んでるのかな・・・・。あたしたちのこと」

「誰かって・・・・、誰がだよ?」

「・・・・・和恵様が言ってたやつじゃない? ずっと昔にこの御山のどこかに封じられた優しい《鬼》」

「それは、秦家に伝わる御伽噺だろ?」

『!?』

 いつの間にか、二人のいる枝に少年が立っていた。やっぱりまだ子供の時の十吾だ。見れば、地上に、百荏と七香の姿もある。

「《鬼》なんて、もう200年以上もその存在が確認されていない。《鬼》という妖怪はすべてただの噂か、抽象的な存在として何かの出来事を語ったものではないかと言われているぐらいだろう?」

 十吾は、現在と同じ口調だ。昔ッから年不相応の喋りの男だったよ、コイツ。

「おーいッ、ご飯だってさーッ。修行さぼってるんだから、これ以上迷惑かけたら、地獄巡りの修行コースになっちゃうよーッ」

 

 

 あれ?

「・・・・ここは・・・・どこだろ?」

 《あたし》は、暗闇の中にいた。光すらない世界に自分だけがポツンと浮いているような、まるで現実感のない世界。

「夢・・・・なのかな?」

 たしかに、夢の中にいるような感覚だ。でも、ここまで自意識がしっかりとしている夢なんて、あるのだろうか? 未来予知などができるフォーチュンテラーなんかは、現実と区別のつかない夢をみることがあるって聞いたことがあるけど・・・。

「・・・・・誰かいるの?」

 《あたし》がすぐ側にある気配に気づいた。闇の中を目をこらすが、なにかおぼろげな影が見えるだけだで、はっきりとした姿は見えない。ただ、自分とおなじくらいの背丈の男子らしき感じはした。

「キミ・・・・・、誰なの?」

『・・・・・・・』

 相手からの返答はない。少し間をおいてから、《あたし》は言葉を続けた。

「ここは・・・・・どこ?」

『キミハ・・・・・ダレ?』

 逆に問われた《あたし》は素直に答える。

「あたし・・・? あたしは壱姫・・・・、あなたは?」

『オレハ・・・・・・・・・・』

「―――!?」

 子供の影の気配が急速に遠ざかっていく。いや、《あたし》自身がその影から離れていた。

闇が晴れ、自分が空に昇っているのがわかった。はじめは朽ち果てた村のようなものが見えたが、やがて眼下には巨大な山林が広がった。その一角に、巨大な湖が見えた。

 そして、また別の場所に、あの《場所》があった。

 

 

 ガバッ!

「・・・・・・・あれ?」

 《あたし》は、ここ数日《あたし》たちの寝床になってる大部屋にいることに気づきしばしポカンとしている。

 おもったとおり夢だった。ただ、おぼろげな記憶ではなく、ハッキリと内容を覚えている。

「・・・・・」

 夢の最後に見た景色。それは、《あたし》がいた場所だった。

 サアッ!

 戸を開け、朝のキツイ日差しを室内に入れる。まだ起きていなかった他の四人が、うめきながら体を起こした。

「ど〜したの〜?」

 むっちゃ気だるげに百荏が問う。

「あの夢、皆は見てないんだね? 」

「はあ? なんの話だ?」

「夢って・・・・、もしかして、あの《声》のこと? 壱姫ちゃん」

「・・・・・・うん! 皆、あたしに付き合って!」

『・・・・・・?』

 なんだかウキウキしている《あたし》の様子に、四人は顔を合わせて疑問符を浮かべていた。

そして、《あたし》に急かされて慌てて服を着替えた五人は、秦家の人間や、一緒に来ている何人かの六流家の人間に気づかれぬように、秦の屋敷を出ていった。

 

 

「なあ、壱姫。いいのかな、勝手に屋敷を抜けだしたりして・・・・・」

「なにをいまさら。あたしたち、ここに来てから何度も修行抜け出して、遊んでたじゃない?」

「抜け出したてたのはお前と七香で、俺たちはお前を連れ戻しに来てたんだろ」

 バサッ!

 《あたし》と千夜が巨木の天辺に出た。今《あたし》がいるのは、あのお気に入りの崖上の巨木だ。

 ここは、《あたし》が見た夢の中にあった景色にあったものだ。《あたし》はその夢に惹かれ、みんなと一緒に、あの場所を探しにでたんだった。

「う〜〜〜〜〜ん・・・・・、アッ、あったッ!」

 秦の屋敷とこの巨木をつなぐ線の延長に、森のわずかな隙間から覗く水面が見えた。

「えーと・・・、十吾ーッ、ちょうど北東の方向ーッ! 距離はッ・・・・2キロほどかなーッ!」

「わかったーッ!」

 《あたし》の言葉に、地上にいる十吾からの声が返ってくる。

「さ、降りよ」

「はいはい」

 《あたし》たちは、巨木をスルスルと降りて、再び十吾たちと探索を開始した。

 まず近場の林道に戻り、一枚の紙を広げる。十吾が用意してくれた、この辺りの地理を記した書の写しだ。

「さっきの壱姫の見立てだと・・・・・、この林道から行った方がよさそうよ」

 百荏の言葉に、十吾が頷く。地図の一点を指差した。

「この道の隣だ。少し戻って、この抜け道を通ればすぐだ。もう何十年も使われていないはずだから、少々キツいものになってるかもしれんが、今から屋敷まで戻るわけにはいかんだろうからな」

「なんせ、わたしたち、修行さぼってここにいるからね〜」

「・・・・・みんな、なんだかんだ言って、楽しんでない?」

 発案者、というか無理矢理皆を引っ張ってきた《あたし》がそう言うと、それぞれが笑みを浮かべる。

「まあ、俺たちもあの《声》のことは気になってたからな。特に《声》をよく聞いていたおまえの夢は興味があるってことだよ」

「・・・ん。じゃ、いこうか」

 

 

 《あたし》たちが、ほぼ獣道と化していた抜け道を通り抜け、別の林道から目的地を目指して一時間弱ほど歩くと、その場所に出た。山間に広がる湖。《あたし》の夢に出てきた場所。そして、あたしが実際に見た場所だ。

「・・・・・おかしいなァ」

 《あたし》が首を傾げる。

「お前の話じゃ、この湖のすぐ側に廃村みたいのがあるんじゃなかったのか?」

 千夜の問いに、《あたし》は自信なさげに頷く。

「ちょうどあたしたちの後ろあたりに・・・・・」

 《あたし》たちの背後にあるのは、森だけだ。どこにも村などない。

「おっかしィなァ・・・・・」

「やっぱ、たんなる夢だったのかもね」

「そうかなァ・・・・」

 百荏の言葉に、《あたし》が肩を落とす。と、七香が湖の側に膝をついて、じっと湖を見ている。

「どしたの?」

「ん・・・、ちょっと気になってね。この湖、魚とかの気配が全然感じられないの」

「魚の・・・・?」

 七香は生まれつき視力が常人より弱く、昔は弓霊を継げないのではないかと心配されていたが、後に持ち前のセンスと努力で、独自の呪的テクノロジーをくみ込んだ眼鏡を作り、それを補っていた。だが、それとは別に、低い視力を補うように備わったかのような、先天的な《力》があった。

 広範囲に及ぶ知覚能力。周囲の気配を捉える能力において、彼女は《あたし》たちだけではなく、神影流の中でも飛びぬけていた。

「これだけ大きい湖だもの。なにかしら生物がいるハズよ。でも、それが全然感じられない」

「ん・・・・、あれッ?」

 壱姫が水面を覗き込み、水際に手を入れた瞬間、湖面が淡い光を放った。

何事かと五人が飛び退ったが、その異変はすぐに治まり、もとの静寂が帰ってくる。

「・・・・・・・・・・」

 五人が恐る恐る水面を覗き込む。変化はなかった。

 五人の姿が水面に映っていないこと以外には。

 

 

「・・・・・・・あ―――ッああああ―――ッ!」

 水面の裏側に別の世界があることに驚き、さらにそこに夢でみた朽ち果てた村があることに驚いている《あたし》。他の四人がその声に驚き、元の世界に滑り戻るところだった。

「おどろいたな・・・・、ここは作られた空間か・・・・」

 一番冷静な十吾も、さすがに驚いていた。

 あたしが鬼哭の里に来たとき、里人と里人の長に認められた者しか入れないこの里に入れたのかということに、ようやく理解した。

 長に認められた証は、物ではなく、術か何かなのだろう。おそらく精神的な印をもって《門》の鍵になってるんだ。そして、その《術》が、刹那からあたしへと魂が転生する際に、受け継がれた・・・といったところだろうか。

「・・・・・やっぱり誰もいないのかな?」

「少なくとも、この付近には人の気配はないわ」

 しばらく目を閉じて、周囲の気配を探っていた七香がハッキリと言った。

「・・・・・作られた空間にしては、すごい広いね。どこまで続いているかわからないよ」

「よほど高位の術者の手のものか、強力な媒体があるんだろうな」

「あるいはその両方ね」

 千夜たちがそれぞれ驚いているのを尻目に、《あたし》は奥の方へと歩を進める。

「・・・・・誰もいないな」

 ついてきた千夜が呟く。《あたし》は頷いた。

 朽ちた家々に、人の気配のない道。ところどころに見られる損壊は、よく見れば年月によるものでないのがわかる。闘いがあり、そして滅びた、《鬼哭の里》。

「―――なんか変な感じがする。まるで・・・、ここを知っているみたいな・・・既視感みたい」

「壱姫もか? 俺もだよ・・・・」

 千夜に続き、十吾たちも同じように呟いた。魂に刻み込まれている刹那たちの《記憶》だろう。

「・・・あの《声》の男の子がいた場所は・・・・多分、あっちの方よ」

 

 

 《あたし》たちは、森の中を進み見つけた円筒形の巨大な岩山にあった洞窟に入った。中を常に照らしてるのか、十吾の作るものに似た鬼火があり、視界はそれほど悪くない。

「なあ・・・、やっぱり戻ったほうが良くないか?」

「そうだな、僕もそう思う」

 千夜と十吾の、この洞窟に入ってから数度目の同じ台詞。この洞窟に入った途端、中に渦巻いている異様な氣を感じたためだ。

「もう、男でしょ?」

「ほんと、か弱い女の子がいるんだから、もっとドッシリとかまえててよ」

「そうだよ。情けな〜い」

『・・・・・・・・・』

 女性陣にこう言われて、黙り込む二人。二人とも、「どこにか弱い女の子がいる?」と声を大にして言いたそうだったが、何倍にもなって返ってくるのが目に見えていたので、心の叫びにしたようだ。

「そもそもねェ―――」

 《あたし》の視界がいきなり暗くなった。なんだか浮遊感のようなものが・・・・、って、《あたし》落ちてる?

 

 ドポーンッ!

 

「・・・・・?・・・・・!?」

 ちょっとパニくってる。水の中だ。頭上に水面と淡い光が見える。

「―――プハッ!」

 《あたし》が水面に顔を出す。かなり広い空洞一杯に水が満たされている。湖・・・、地底湖だ。

「・・・・・あそこから」

 上を見上げると、ちょうど真上、5mほどのところに穴がポッカリ空いている。それほど長い時間落ちていない割には、さっきいた場所まで見えない。闇の塊のようなものが視界を遮っている。

 感じていた異様な気配がさらに強くなった。それを探ってみると、地底湖の端の壁に大きな亀裂が走っている。その氣は、その奥から漏れ出していた。

「・・・・あ」

 千夜の声がした。見上げると、天井の穴からロープが垂らされているのが見える。用意しといたロープだ。ということは、さっきの場所まで15mほどか・・・・。

「あッ、おーい千夜――ッ!」

「無事かーッ!」

 《あたし》が手を振り大きく頷くと、降りてきた千夜が安堵したように苦笑する。水面のすぐ近くまで伸びてきたロープを伝って降り、《あたし》のすぐ近くに着水した。

「ほら、あそこ。あそこからもっと奥に行けそうよ。おーいッ、十吾たちも降りてきてーッ!」

「・・・・こりないヤツ」

 亀裂に向かって泳ぐ《あたし》の背後で、溜息とともにそんな言葉を千夜が呟いたが、かまわず進んでいく。

 近くまでくると、その亀裂が人の手によるものだとわかった。断面が馴らされているし、階段が設置されていて水上に上がれた。中には鬼火はなかったが、ずーと先に光が見える。

「あのさー、壱姫」

 背後から百荏の沈んだ声が聞こえた。振り返ると、《あたし》と同じようにビショ濡れの四人が水面から上がってくるところだった。

「わたし、なんか嫌な予感してきた。とりあえずは水難ってところ」

「さー、はりきってGO!」

 《あたし》は聞く耳持たずで、亀裂の中を光に向かって進む。他の四人も「やれやれ・・・」といった感じでついてくるようだ。

 けっこう長かった亀裂の中を、十吾が作り出した鬼火の光を頼りに進む。やがて亀裂の道が終わり、再び開けた空間に出た。

「うわ・・・・」

「すごいな、これは・・・」

 《あたし》たちは、その広い空間の破砕状況におもわず絶句した。とてつない力が加わったとしか見えない破壊跡がそこかしこにあった。

「あれは・・・・・」

「あれがこの《氣》のもとか」

 空洞のほぼ中央に人ほどの高さの石柱が、寄り添うように立っている。少し離れた場所には一際大きい岩柱があった。

 岩柱のいくつかには亀裂が走っていて、そこから《氣》が漏れている。

 そして、石柱群のすぐそばには、一本の剣が刺さっていた。

「これって・・・・、封印石よね?」

 七香が石柱をペチペチと叩いてる。

「ってことは、妖怪が七匹いるってことか」

「ねェ・・・、嫌な予感パート2なんだけど・・・・」

 ものスゴーく嫌そうな顔で、百荏が石柱群を指差している。

『?』

 百荏の言葉に、四人がその指の先を目で追った。

『あ・・・・・』

 ピシッ!

 石柱の幾つかに亀裂が入っていた。特に、一番小さい石柱は、今も少しずつ亀裂が広がっている。

「・・・・・・開封されてるな」

 妙に落ち着いた声で言っているが、十吾のこめかみに汗が一筋。亀裂からは妖気が漏れ出している。まだ完全に封印が解けていないというのに、全身に鳥肌がたつぐらいの強い気配だ。

 ビキビキッ!

「やば・・・・」

「逃げるぞッ! 僕たちの手に負える相手じゃなさそうだッ!」

 《あたし》たちは、その石柱に背を向け、地底湖に続く亀裂に向かって走り出す。

 ガコォッ!

 背後から破砕音が響いた次の瞬間、封印によって抑えられていた妖気が嵐となって空間を駆け巡った。《あたし》たちの体は風に舞う木の葉のように、吹っ飛ばされた。

「・・・・・・・」

 どのくらい気をうしなっていただろう。《あたし》がうっすらと瞼を開くと、そこは薄暗い洞窟の中ではなく、日の光の下だった。

「・・・・気がついた?」

「!?」

 《あたし》は聞き覚えのない声に驚き、飛び起き、その場を跳び退った。

 キョトンとこちらを見ている顔が一つ。ボロキレのようにズタボロな服を着た、《あたし》と同じくらいの年頃の男の子。

 《過去見の陣》で見たことがある。三芽さんの術で見せてもらった200年前の闘いの中でも見た。

 葦鳳隗斗を封印した《鬼哭の里》の六人の一人、10歳を過ぎた頃の九十九だ。

「驚かせてゴメン」

 キョトンとした顔から、あたしの知ってる九十九と同じ笑みに変わった。

「う、うん・・・・こっちこそゴメン。君・・・・、もしかして、あたしの夢に出てきた子?」

「夢? ・・・・ああ、そういえば、見たっけ。うん、おんなじ気配(におい)してる」

「・・・・・ここは」

 あらためて周りを見てみると、そこは《真鬼の洞》への入り口のすぐ側だった。《あたし》のすぐ側には、千夜たちがいる。皆、《あたし》と同じように、気を失っているようだ。

「・・・あッ! 妖怪がッ」

 ようやく、開封された妖怪の妖気によって吹っ飛ばされ、それで気を失っていたことに気づき、声をあげた。

「って・・・・、そういえば、どうしてあたし達ここにいるの?」

「そりゃ、俺が開封されたときに、君等が気を失ってたから、俺が運んだんだよ」

「・・・・君が? 妖怪?」

「うん」

「でも、全然それっぽくないし・・・、それに霊気しか感じない」

「ああ、俺、半妖だから。この姿の時は霊気を使うんだ」

「へェ〜・・・・」

「・・・・・・・・」

 九十九が不思議なものを見るような目を《あたし》に向けている。

「・・・・どしたの?」

「いや、俺が半妖って知って、怖がんなかった人って、そういなかったから・・・・」

「そおなの? 君、コワイ感じがしないし・・・・・、妖怪だからって、全部が全部コワイもんじゃないでしょ?」

「・・・・まあね」

「それに、あたし父様によく言われてたもん。『妖怪だっていいヤツはいる。そんな妖怪と人を繋げるのも父様の仕事だ』ってね」

 ああ、そっか。このときのあたしは、こんなことも当たり前に言えてたんだ・・。

「・・・・いいお父さんだね」

「うん。あたしがこの世で一番好きな人だよ」

「そっか・・・・ハハッ」

「アハハッ」

 笑みをこぼし、九十九と《あたし》は笑い合った。

「あッ、そういえば君、妖怪だっていったけど、もしかして《鬼》?」

「うん。なんで?」

「この御山にさ、御伽噺があるんだ。やさしい《鬼》が自分と一緒に悪い妖怪を封じたって・・・・。君のことでしょ?」

「あー・・・、正確には、俺の父さんだな、それ。俺達は父さんを手伝っただけだしね」

「ふーん・・・、あ、あの六つの石柱ッ。あれがその人たちね?」

「うん。先に俺だけ開封されたけど、あそこには、俺達の里の中でも特に強い人たちがいるんだ」

 嬉々とした表情で九十九が里人たちのことを話してくれた。

「鴉天狗の疾風さん。雪女の冷那さん。この二人は、万が一の非常時に力になってくれるように、ここら一帯の隠れ里のまとめ役をやっている猿爺が呼んでくれた人たちだ。そんで、雷過さん。この人は、もともと退魔師の家系の人だったんだけど、退治した雷獣の呪いを受けちまって、妖怪化したんだ。そのために人の世を追われて、この里に流れ着いたんだ」

「ふーん・・・・。元々人だったのに、か」

「うん、俺の父さんは、そういう人たちを助けるために、この国を巡ってた。どこに行っても、人と妖怪は合い入れない者同士で、特に俺達みたいな半妖は、人と妖怪どちらからも嫌われてる。ま、たまーに君みたいに、ノー天気に近づいてくれる人もいるけどさ」

「うわッ、ひどい〜」

「ははッ。んでね、俺の姉さん、三芽っていうんだけど。すごい人だよ」

「? どんな風に?」

「術師として、姉さんは尋常じゃない才覚を持ってた。《鬼》の格闘力に、戦闘でも自在に操る《術》を併せ持った姉さんは、15歳のときにすでに里の中でも、五本の指に入る《力》の持ち主だった」

「そんで、君を合わせて五人。んで、最後の一人は、君の父様?」

「うん、里で一番強い人だった。父さんと同等の闘いができるのは、俺の叔父さんしかいないと思う。父さんも、叔父さんも、人とか妖怪とかを超えた強さだった」

 なんだか嬉しそうだ。

「ん・・・・? どしたの?」

「いや、なんだか嬉しそうだなー、って」

 《あたし》が思ったことをそのまま言うと、再びキョトンとした。

「あー・・・、ずっと一人ぼっちだったからさ・・・・、うん、嬉しいんだ。人と話すのが」

 パアッと満面の笑みを浮かべる。つられて《あたし》も笑みになってしまった。

「ずっと一人ぼっちって?」

「・・・あの封印さ、俺たちを基礎の《柱》にしてたんだけど・・・・、強力すぎて効果が切れてもすぐには解けないでいてね。多分・・・・10年ぐらいかかったんじゃないかな?」

 九十九の表情がちょっと沈んだ。

「意識がハッキリしてきたのはここ数ヶ月だけど、ずっと光の差さない闇の中にいたからさ」

 一筋の光も差さない闇の中。おそらく想像もできないほどの孤独感を感じただろう。常人はそんな状態の中では、もって二日しか正常でいられないと聞いたことがある。

「あそこは、とても暗かった。とても寒かった。とても・・・・寂しかった」

 顔を上げ、《あたし》に目を向けた。

「だけど、数日前からなんだか懐かしい気配を感じるようになったんだ。とても懐かしい五つの気配」

「五つ?」

 《あたし》は、千夜たちに目を向ける。《あたし》、千夜、十吾、百荏、七香。五人だ。

「あたしたち?」

「うん。君等は俺の知ってる人達によく似てる。君は・・・・、もしかして、神影流剣霊の人?」

「そ、そうだよッ!? なんで、あたしたちのことを知ってるの?」

 それは、《あたし》たちの祖先が、九十九たちの友だったから。

「それは、神影流の人達と、俺たちが昔、知り合いだったから・・・・。そーいえば、あれから何年たったんだろう?」

「う・・・う〜ん」

 九十九が首を傾げてると、千夜たちが目を醒ましてきた。

「あ、あれ?」

「やあ」

 九十九が軽く挨拶。四人はポカンとした。

 

 

「それじゃ、俺は戻るよ」

「え?」

 気を取り戻した千夜たちと一緒に、しばらく話をしていると、九十九が立ち上がって、そう言った。

「・・・・《あいつ》を見張らなきゃ。俺が開封されたってことは、《あいつ》の封印も解けかかってるってことだから・・・・。もし、父さんたちが目覚める前に《あいつ》が復活したら、俺だけで闘わないといけない・・・・」

「《あいつ》って・・・・?」

「それは・・・・・・」

 九十九がハッとした様子で、言葉を止めた。

「妖怪さ。悪い、ね」

 嘘だ。《あたし》たちが、真実を知らないことに気づいたから。自分たちとおなじ一族が、大きな過ちを起こしたことを知らずにいたから。それを知ったら、《あたし》たちが傷つくかもしれないから。

「じゃあ、行くよ。楽しかった」

 最後にもう一度、あの気の抜けたような笑みを浮かべ、九十九は《真鬼の洞》へと消えていった。

「あッ! ねェ――――ッ! 君の名前は―――ッ!」

 《あたし》は洞窟の中に向かって叫ぶ。すぐに返事が返ってきた。

「九十九、百の一つ下」

 弾むように嬉しそうな声。響いていた足音は、すぐに小さくなっていった。

「・・・・・ツクモ・・・・・九十九か」

「不思議だな」

 隣にいた千夜が、頬を掻きながら呟いた。

「一時間近く話していたのに、あいつの名前を聞いてなかった」

「うん・・・・。ずっと前から知ってたみたい」

 知っていた。《あたし》は・・・・あたし達は知っていた。九十九という名。九十九の過去。魂に刻まれた記憶が、本来消えるはずの刹那という女性の《記憶》が、九十九のことを教えてくれた。

 それは、とてもか細い声。九十九に徐々に迫っていた危機を教える声。200年前もの誓いを果たすために、刹那たちが必死に振り絞って、《あたし》たちに伝えようとした《声》。

 

 

「ぅお〜いッ!」

 ちょうど、《真鬼の洞》から出てきた九十九を大声で呼んだ。

「・・・・・えっと」

 翌日、再び訪れた《あたし》を見て、九十九が首を捻った。

「・・・・・・名前、なんてったっけ?」

「・・・・・・ああ」

 《あたし》がポンッと手を合わせる。

「そういや、あたしも名前言ってなかったね」

 《あたし》たち同様、九十九の方も《あたし》たちの名前を知らずにいたんだ。

「あたしは壱姫。そういや、夢の中でも言ったよね?」

「・・・・ん、あれはよく覚えてないんだ。封印されてる時はおぼろげな意識しかなかったから。それより、なんでまたここに?」

「あ、コレコレッ!」

 《あたし》はもってきた紙袋を前に出した。中には、千夜の服が何着か入ってる。それと食べ物も少々。

「ホラ、君、服ボロボロだからさ。千夜と同じぐらいみたいだから、分けてもらってきた」

「あ、ありがとう・・・・」

「それと、ホラ。和恵様に握ってもらったオニギリと、こっちはオカズ」

「カズエさん?」

「秦の人よ。時雨様の奥さん」

「ふーん・・・・」

「あ、明日の昼に、神影流の人たちが会いに来るってさ」

 《あたし》は、和恵様に頼まれていたことを思い出し、九十九に伝えた。九十九は、一瞬キョトンとした顔になり、しばらく考え込んでいた。

「わかった。あんまり、長いこと離れてると気になってしょーがないから、俺、戻るよ」

 そう言って《真鬼の洞》へと向かう。

「うん? そういや、なにかしに出てきたんじゃないの?」

 九十九の背中を見送っていた《あたし》がふと思いたち、そう聞くと、九十九はしばらく立ち止まり、頬を掻いた。そして、振り向かずに答える。

「・・・・・君達がまた来てくれるかもしれないと思ってね」

 ちょっと上ずった声で言って、九十九は洞の中へと入っていった。

「・・・・あ、ちょっと」

 《あたし》は、ハッとして九十九の後を追った。

「ん?」

 歩いていた九十九にすぐに追いつく。駆け足の音に気づき、振り向いて《あたし》を待っていた。

「どしたの?」

「服と伝言だけで来たんじゃないの。君と話がしたくてさ」

「俺と?」

「うん、あたし、君のこと気に入っちゃった」

「気に入ったって・・・・、犬猫じゃないんだからさ」

「人も動物も、仲良くなる第一歩はそこからでしょ?」

「・・・・・そうかもね」

 

 それから数日、穏やかに日々が過ぎた。

 九十九は相変わらず、封印を見張っていて《鬼哭の里》から出ようとしなかった。でも、毎日のように会いに来る《あたし》たちを待っているのか、日に何度かは、《門》の湖のところまでやってくる。

 あたしの父様や銘奈婆ちゃん、神影流の当主の何人かが、九十九の元にやってきて、何かを話していた。これからの事やこれまでのこと、そんなことらしい。

 事の起こりは、いつも突然だ。いつもの通り、九十九が待っているハズだと思って《あたし》は《門》を抜け、鬼哭の里へと入った。しかし、九十九はどこにもおらず、《あたし》は朽ちた村を抜け、真鬼の洞へと向かった。

「九十九―――ッ。オーイ!」

 何度も呼んでみたが返事は返ってこず、《あたし》は真鬼の洞までついてしまった。中にいるんだろうと思い、《あたし》は洞の中に足を踏み入れた。

「――――!」

 ゾワアッ!

 《あたし》はまるで総毛立つような悪寒を感じた。入り口は妖気の流出を防ぐ弱い結界壁が張ってあるため分からなかったが、洞の奥からとてつもない妖気が流れてきていた。

「・・・・・九十九、じゃないわよね?」

 よく似ているが、九十九の放っていた妖気とは違う。もっと雄雄しい気配だ。

「・・・・・・!」

 鬼火が照らす洞窟内を駆け出す。幾つかの分岐点を抜け、立方体に整えられている部屋に辿りついた《あたし》は、地底湖

に続く穴へと跳び込んだ。

 ドポーンッ!

 勢い良く地底湖に落下して、すぐさま水面まで浮上した。ちょうど真正面に見える大きな亀裂から、その妖気は流れ出して

いる。九十九が封印されていた部屋へと続く場所だ。

 《あたし》は地底湖を泳ぎ、亀裂へと入る。亀裂の入り口にある階段を上り、しばらく進むと、封印の部屋についた。

「・・・あッ! 九十九ッ!」

 五つ並ぶ石柱の側に九十九が立っている。

「・・・・あ、壱姫」

 ボーッとしていた九十九は、すぐ側に近づくまで《あたし》が来ていることに気づいてなかった。

「どうしたの?」

「・・・・コレ」

 九十九が目の前の石柱を指差す。九十九が封じられていた場所のすぐ横にある石柱の亀裂が大きくなっている。妖気はそ

こから溢れ出ていた。

「父さんが眠りから覚める・・・・。あッ!?」

「ど、どうしたの?」

「誰かが開封されそうなら、呼んでくれって、銘奈婆さんたちが・・・・・」

「じゃあ、あたし、皆を呼んでくる・・・・・って、ああ?」

「・・・・・頭までズブ濡れだね、縄をはらずに飛び降りてきたんだろ?」

「・・・・・うん」

 バサァッ!

 九十九の背中に翼が出現する。

「上まで送るよ」

「うん・・・・」

 先んじて地底湖に向かおうとした壱姫が、足を止め振り向く。

「・・・・・?」

「綺麗な翼だよね、それ」

 

 一時間後、大急ぎで秦の屋敷へと戻った《あたし》は、父様やお婆ちゃん、それに千夜達や他の神影流の大人たちを連れて、鬼哭の里に戻ってきた。その頃には、洞の入り口の結界だけでは止めきれなかったのか、九十九の父親の霊気が湖まで届いていた。

「これが九十九くんの父の妖気か・・・・、この分だとすでに開封されているかもしれんな」

 あたしの父様、葦鳳 刀路が感嘆の息を吐く。

「・・・・ねえ、父様。なんで守薙を持ってきたの?」

 刀路の手には、葦鳳の当主が受け継いで来た神木刀守薙が握られていた。他の当主たちである千夜たちの父や母も、雷震、神羅などの法具を装備している。

「・・・・もしかして」

 不安になっていた《あたし》の頭を、父様が優しく撫でてくれた。

「大丈夫だ、壱姫。父様たちは九十九くんたちを敵にするつもりはない。この備えは、彼等の《敵》に対するためのものだ」

「敵?」

「彼等が封じられていたのは、彼等自身が封印の《柱》となるためだ。それが解かれてきているということは、彼等の《敵》の封印も弱まってきているということだからな・・・・。秦家が持っていた情報と、九十九くんが語ってくれた情報を合わせてみると、《敵》はとても強力で、そして邪悪だ。放ってはおけん」

「・・・・・・」

「二つ目の《柱》が解かれつつある。しかも、九十九くんの父は、封印の中核であるはずだ。《敵》の封印もかなり弱くなるだろう・・・・・、さあ、行くぞ、壱姫」

「うん」

 

 《あたし》たちが封印の部屋に辿りついた頃には、九十九の父様の石柱の亀裂は、ほぼ全体に広がっていた。九十九は、さっき《あたし》が来たときと同じ位置に立ち、同じように石柱を見つめていた。

「九十九」

「・・・・もうすぐだ」

 ピシッ!

 石柱に一際大きな亀裂が走った。

「あッ、ヤバいッ!」

 千夜が皆の方に振り向き、慌てた声で叫ぶ。

「封印が解かれたら妖気が一気に放出されるんだッ」

「みんな伏せてッ!」

 十吾が続けた言葉に反応し、その場にいた者が地面にしがみつくように伏せた。《あたし》も石柱から離れ、地面に伏す。

 ゴガァッ!!

 石柱が一気に崩れ、抑え込まれていた妖気が嵐となって吹き荒れた。みんななんとか吹飛ばされずに、地面にしがみついている。

 なんとか僅かに顔を上げ、石柱群の方に目を向けると、この嵐の中を微動だにせず立っている九十九の目の前に、一人の男が現われるのが見えた。その背には雄雄しい銀の翼があり、額には光を放つ一本の角があった。嵐がおさまるにつれ、それに同調するように、その翼と角も消えていく。

「・・・・・・・久しぶり、と言った方がいいのかな、九十九」

「・・・・・・・父さん」

 優しい笑みを浮かべ、現われた男、九十九の本当の父である《鬼人》零朱は、九十九の頭を撫でる。

「・・・・・あなた方は、神影流の方々ですね」

「はい」

 一同を代表するように、秦家の当主、時雨様とその妻である和恵様が歩み寄る。

「あなたのことは、先代より聞いておりました。まさか、私の代であなた方を迎えることになるとは思ってませんでしたが」

 どうやら、秦家には《鬼哭の里》のことが正確に伝えられてきていたらしい。

「・・・・・・」

 零朱さんが視線を一際大きな石柱に向ける。一同も石柱を睨むように目を向けた。

「・・・・まだ大丈夫か。封印がほころんでいる様子がない」

 零朱さんの言葉通り、《敵》―――隗斗が封じられている石柱にはなんの変化もなかった。

「・・・・・ん?」

 《あたし》がすぐ側で見上げていることに気付き、零朱さんは腰を落として視線を合わせてくれた。

「君は・・・・・剣霊の子だね?」

「あ、はい」

 九十九と同じように、すぐに血筋を見定められて、《あたし》は慌てて返事をした。

「この壱姫とあそこの千夜たちが、最初に俺を見つけてくれたんだ」

 九十九が《あたし》の横に並び、笑顔を見せる。

「・・・・・・そうか」

 しばらく九十九と、九十九の笑みにつられて笑ってる《あたし》を眺め、零朱さんも笑った。

「壱姫、だったね。九十九のこと、礼をいうよ。ありが――――」

 ドスッ!

『――――』

 《あたし》たちは絶句した。《あたし》の頭を撫でようとした零朱さんの手が止まっていた。そして、《あたし》の目の前、零朱さんの胸から、ナイフのようにとがった石片が突き出していた。《あたし》の顔に、生暖かい血が降りかかる。

「ぐッ・・・・」

 呆然としている《あたし》や九十九に背を向け、冷朱さんが振り向く。隗斗が封じられている石柱の一部が崩れていた。その一部が、飛来し、零朱さんの体を貫いたのだ。

 石柱は妖気を込められていたようで、淡く赤い光を放っている。

『《封滅》の封印で、私の《力》をずいぶんすり減らしてくれた・・・・・』

 石柱の砕けた部分から声が響いた。そこから放たれる妖気に、父様たちが戦闘態勢に入る。

『これは貴様を盗り込むことで取り戻すこととしよう!』

 ブアッ!

 石柱から文字にも見える無数の模様の形をしたエネルギー体が飛び出し、零朱さんに向かって飛来する。

「結界を!」

『遅いッ』

 防御しようと父様たちが動くが、模様群はさらに速度を上げ、零朱さんへと接近する。

「父さんッ!」

 九十九が模様群と零朱の間に立った。しかし、模様群はバッと広がり、九十九を避けて零朱さんの傷口に集まっていった。

「あ・・・・アアアアッ!」

 零朱さんが苦悶の声をあげる。模様群は瞬く間に傷口から体内へと侵入していった。

『さて・・・・、おそらくは我等の時代の当主の生れ変わりたちよ・・・・。貴様らの恐れていた男の復活だ!』

 零朱さんの顔つきが変わっていく。体つきもだ。

 それは、九十九が最も忌み嫌う顔。最も愛する父から、最も嫌う男へと変わった瞬間。

「あああ・・・・・うわあああああ――――ッ!」

 九十九が嘆きとも怒りともとれる叫びを発し、《鬼》の姿へと変じた。

 それは、《鬼人》零朱の《力》と《肉体》を奪って甦った、宿敵の復活だった。

 

 

     

     第26章へ続く・・・

 

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